二条城
たてもの探訪Ⅱ(山城126) 2024年09月08日公開
京都市中京区
◆れきし
徳川家康が、慶長8年(1603)に、京都御所の守護と将軍上洛の宿泊所とするために築城。将軍不在の時は、江戸から派遣された武士(二条在番)によって守られていました。
寛永3年(1626)、3代将軍家光の時、後水尾天皇の行幸のために大規模な城の改修がなされ、敷地を拡張して本丸がつくられ、本丸御殿や天守閣(伏見城から移築・改修)が建てられました。しかし天守閣は寛延3年(1750)に落雷で焼失、本丸御殿も天明8年(1788)の市中大火により焼失したのです。
時は下って慶応2年(1866)、本丸に第15代将軍徳川慶喜のための仮御所が建てられ、翌年、慶喜は二の丸御殿で「大政奉還」を宣言しました。
明治になってからは城内に太政官代がおかれ、本丸の仮御所は10年余りで撤去。そして明治17年に二条城は、皇室の別邸「二条離宮」(宮内省所管)となりました。
現在の本丸御殿は、明治27年に明治天皇の命によって、京都御所の北側にあった旧桂宮御殿(江戸時代後期)の主要部分を移築し、再整備したものです。明治天皇は翌年にさっそく行幸し、主要な部屋に「松鶴の間」などの名前を付け、御常御殿2階の御座所には「呈寿」の額を掲げさせ、庭園の植樹なども細かく指示して作らせました。そして大正天皇の即位のさい二条離宮は大宴会場として使われ、天皇や皇太子が地方へ赴く際の宿泊所として頻繁に滞在されたのです。昭和14年(1939)、政府は二条離宮を京都市に下賜。「元離宮二条城」として、代表的な京都の地として、内外の人に親しまれてきました。
しかし平成7年(1995)1月17日に起こった阪神淡路大震災の影響をうけ、建物にゆがみが生じたため、平成19年に公開を停止。平成29年より保存修理工事が開始されて、令和6年3月に修復完成、9月より一般公開が再開されたのです。本年は「古都京都の文化財」が世界遺産に登録されて30周年の記念の年でもあります。
◆みどころ
二条城は、慶長8年(1603)の家康将軍宣下の祝賀から始まり、慶応3年(1867)年の15代将軍慶喜の大政奉還までの240年余り、京都守護の役割を果たしてきました。特に二の丸御殿(国宝)は、江戸時代初めに完成した住宅様式・書院造の代表例として日本建築史上重要な遺構で、障壁画・欄間彫刻など、その豪華絢爛な設えからは、将軍の圧倒的な権威を目の当たりにすることができます。
特筆すべきは、濠や石垣など、明治維新を経てもなお、完全無欠で城の姿を伝えていることでしょう。それは、明治天皇の意向によってここが離宮として再生され、新しい歴史的な意味を持ち続けてきたことにあり、本丸御殿(重要文化財)の存在はその象徴にほかなりません。二の丸御殿と本丸御殿。武家の文化と宮廷文化の両方が融合した特別な空間は、まさに「京都」ならではの豪華絢爛、かつ雅びな特等席なのです。
◆◆◆参考:桂宮家と桂宮御殿
桂宮家は、誠仁親王の第六皇子・後陽成天皇の弟・智仁親王(としひとしんのう、1579-1629)を初代とし、豊臣秀吉によって創設された「八条宮家」に始まります。常磐井宮・京極宮家と名を変え、文化7年(1810)、第9代盛仁親王(たけひとしんのう)の時に「桂宮家」となります。京都御所北の今出川屋敷・石薬師屋敷のほか、下桂御茶屋(現桂離宮)・陵御茶屋・鷹ヶ峯御茶屋・開田御茶屋(現長岡天満宮・八条ヶ池)を造営。
洛中の屋敷は度々火災に遭い、最後の御殿は嘉永2年頃に再建。ここは和宮が江戸へ嫁ぐ前に一時居住し、御所が火災に遭った時には、孝明天皇の仮御所にもなりました。
明治3年12月22日、新政府による上地にともない、桂宮家の家事向き一切は宮内省管轄となり、宮家は宮内省京都支庁(出張所)として、京都御所の保存や京都に残った公家らの支援にあたります。しかし、明治14年10月3日、第12代淑子内親王(すみこないしんのう、1829-1881)が亡くなり、桂宮家は廃絶。このような経過を経て、桂宮御殿は二条城に移築されて皇室の離宮となったのです。膨大な宮家所蔵の美術品や記録類も宮内省に移管・保存移管され、現在は移築資料も含めて、宮内庁公文書館や書陵部で公開されています。
京都御苑、今出川御門の南には今も当時の門が残っており、内部の建物跡や庭園も見学できるように整備されいますので、二条城と合わせてぜひご訪問ください。
史跡旧二条離宮二条城」
東大手門
東南隅櫓
唐門
唐門から二の丸御殿
二の丸御殿
二の丸御殿装飾
二の丸庭園
二の丸庭園
内濠から本丸櫓門
本丸櫓門
天守閣跡
天守台跡から如意ヶ岳
本丸御常御殿
本丸御殿
今出川御門と旧桂宮邸跡
旧桂宮邸跡(京都御苑)
旧桂宮邸跡(京都御苑)
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