八坂の塔(法観寺五重塔)

たてもの探訪Ⅱ(山城127) 

2024年10月10日公開

京都市東山区


◆れきし

 寺伝によれば、聖徳太子が如意輪観音の夢告により、五重の塔を建てて仏舎利を納め、法観寺と称したのが創建と伝えられています。

 造営者は、高句麗から渡来して八坂郷に定着した「八坂造(やさかのみやつこ)」とみられ、平成21年(2009)の発掘によって7世紀(白鳳期)の塼仏や瓦が出土していますので、平安京遷都以前に遡る京都で最も古い寺院であることは確実です。平安時代の『続日本紀』や『延喜式』には「八坂寺」とあり、鎌倉時代の仁治元年(1240)に臨済宗建仁寺派に属する禅寺となってから「法観寺」の寺号に。

 五重の塔は三度の火災に遭い、現在の塔は永享12年(1440)、室町幕府将軍足利義教の援助により再建されたもの。塔の初重には五智如来が祀られており、境内の北に太子堂・薬師堂(江戸時代再建)が並んでいます。

◆みどころ

 東寺、興福寺の五重の塔に次ぎ、高さは46m。礎石(凝灰岩)は創建当初のもので、円形舎利孔・石蓋孔・凹柱座のある白鳳様式。塔内の中心を貫く心柱は、礎石から相輪まで達し、一本の柱で塔全体の均衡を保っています。

 「八坂の塔」は言わずと知れた京のシンボル。2024年8月5日の特別公開(企画otonami)では、ご住職さんから案内で、塔内部や境内を参拝させていただきました。東山に堂々と建つその姿は、平安京以前からの遥かな由緒と「応仁の乱」をも乗り越えた力強さがあります。